欄間のパネル修復①

「古いステンドグラスを修復して所有のシェアハウスの欄間に入れたい」とご相談を受けたのが去年の2月の事。ご依頼主がネットオークションで偶然出会い、購入した2枚のパネルの1枚は広島県から、1枚は山口県からと離れた場所から運命的に引き合わされたステンドグラスでした。
驚いた事にこの2枚のステンドグラス はデザインが対象になっていて、使われているガラスもサイズもほぼ同じものでした。パネルの縦の長さが約36cmあり、古い日本家屋の欄間にちょうど収まるサイズ。デザインも下から見上げて鑑賞する事を考慮されていました。別々に発見された2枚のガラスは同じ場所で生まれ、もしかしたら同じ家の欄間に入っていたかもしれない…と、お客様とドキドキが止まりません。


オークションにあがっている製造時期をみると、明治大正と書いてありました。日本でステンドグラス が作られるようになったのが明治中期からですが、明治はまだ工房が少なく、盛んに作られていたのは大正〜昭和前期頃のようです。
輸入品のアンティーク のステンドグラス の修理は何度か請けた事がありましたが、日本の古いものは初めての事です。
パネルは日本の昔ながらの手法で、細かい部分も全て鉛線で組まれていて、全面ハンダが施されていました。
木枠を外して良く見てみると、2枚の保存状態はあまり良くなく、鉛線が劣化してガラスが今にも外れそうになっていたり、破損しているガラスが50箇所近くありました。パネルを良く見ればみるほどに、大変な仕事を引き受けてしまったと焦りました。
このパネルは過去に修復の手が加えられていましたが、2枚の手法が異なっていたので、行く先でそれぞれ修復を受けたようです。経年変化もありますが修復状態があまり良いものとは言えず、接着材のようなもので応急処置されていたり、使用されたガラスが元の色とかけ離れていたり。(ステンドグラス の修復は手を入れるとどうしても雰囲気が変わってしまうので、同じような復元は難しいのです)
悩んだのはガラスの代品です。使われていたガラスは古く、その時代のものは今は手に入らないので、問屋さんに相談して出来るだけ色が近く、入手できるもので代用しました。自分も手を加える事で歴史的価値や良さを損ねるのではないか、不安に思う事もありましたが、とにかく最善を尽くして直す事を目標に気持ちを高めて挑みました。
鉛線も使えそうなものはなるべく当時のものをそのまま使用し、ガラスとパテ(ガラスと鉛線の隙間に埋めたもの)を慎重に取り除いて作業を進めていきます。

お客様とメールのやり取りを重ねていくうちに、パネルを増作して、シェアハウスの欄間に合う物に改めて作り直す事になりました。(この時点で2019年6月の話)
欄間の横の長さは170cm、パネルは70cm。100cmx2枚分の増作が必要となります。さぁどうしましょう。

つづく

stained glass Ginga

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